- 発表者
- 林 明子
- 日時:
- 2022年12月11日
- 場所:
- オンライン
専門分野における「読みのストラテジー」習得に向けて -テクスト言語学を援用した試み
- 発表要旨:
大学教育の中では、学術言語という言語変種が習得される必要がある(アカデミック・ライティングもその例である)。かつてドイツ語母語話者を読者として想定していた学術ドイツ語の入門書も、近年、DaF/DaZに対象を広げてきており、ドイツ語学習者のためのシリーズDeutsch für das Studium(Klett)なども発行されている。日本語教育分野では、専門的な知識を使いながら文章を理解するストラテジーの習得や、特定の専門分野に焦点を絞った読解ストラテジーを身に付ける教材がある。いずれも、テクスト言語学・文章論・語用論などの研究成果が生かされている。そうした文脈を背景に、本発表では、専門分野の学びという観点からドイツ語テクストの「読み」を考える。専門科目では、一次文献と二次文献との区分も重要である。二次文献では専門知識を得るための媒介言語・メタ言語としてのドイツ語に焦点を当てるが、一次文献ではドイツ語は分析対象の言語でもある。そこで、「分析的読み」という概念を持ち込みながら、語の選択・統語構造・照応関係・文章のマクロ構造などに注目し、ドイツ語から離れない読みのストラテジー習得を目指して論を展開する。テクスト言語学を援用した課題を用いた講読の授業実践について報告し、発展として専門分野の演習への応用を考える。言語自体の分析に取り組む言語学分野のみならず、史料と向き合う歴史学との多分野協働の試みについても言及したい。
(本研究は、科学研究費補助金基盤研究(C)「専門分野の教育を支える言語変種『学術ドイツ語』の習得:「読み」を焦点に」(課題番号20K00844)の研究成果の一部である)