- 発表者
- 保阪靖人
- 日時:
- 2024年11月24日
- 場所:
- 早稲田大学
ドイツ語における疑問詞の長距離移動について:移動の障壁(島)について
- 発表要旨:
本発表では、ドイツ語のdass節からの疑問詞の長距離移動について論じる。その典型例は、Was glaubst du, dass Hans gekauft hat? である。動詞kaufen の目的語であるwas がdass節を超えて主文へ移動している。本発表ではこのような構文は英語やイタリア語などと比べるとかなり制約を受けることを述べる。英語のthat節や、イタリア語のche節に対して、ドイツ語のdass 節は移動の障壁となっており、この障壁を本発表ではRoss(1967)の用語から、島(Insel)と名付ける。そして、その障壁の強さを「島性」と名付け、「島性」について明らかにしたい。
日本語で「太郎は何を買ったと思いますか。」という文は自然な疑問文であり、もし島性がドイツ語にあるとすれば、この日本語に対応する表現をどうやって実現するかという問題がある。例えば、Was hat Hans gekauft, glaubst du?でもそれは十分実現されるかもしれない。また、挿入的にWas glaubst du hat Hans gekauft?としても可能かもしれない。しかしながら、ドイツ語は次のようにこの島性の問題を回避する構文を多く利用している:Was glaubst du, was Hans gekauft hat?
本発表では、この構文がかなり自然に使用されていることを述べるとともに、それがdass 文の島性と関わることを主張したい。