分析的な読みからテクスト産出者の意図を探るまで -専門分野につながる読みのストラテジー 習得を目指して-

発表者
林明子、西出佳詩子
日時:
2024年11月24日
場所:
早稲田大学

発表要旨:

 大学におけるドイツ語教育は、専門分野での運用に耐える学術ドイツ語への発展を見据えて行われるべき性格を持つ。本研究では、2年次以降の語学領域における「講読/読解」のあり方を、「専門分野につながる読みのストラテジーの習得」という側面から捉え直す。ここでは、読みのストラテジーを、学生が専門分野で自立的に運用できる「分析的な読み」に限定する。音声・語彙・形態・統語レベルの既習知識の活性化とともに、テクストレベルで新しい知識や分析力を身に付け、そこから得られる気づきを体験することによって、分析的な読みの習得を目指す。専攻におけるドイツ語との関わりが直接的か間接的かを問わず、文献やデータに自立的に取り組める力をつけてほしい。そこで、まず、テクスト言語学の知見に基づく教科書分析・課題教材の作成に取り組んだ。次に、それを用いた授業実践に臨み、学習者からフィードバックを得るという作業手順により、専門分野への発展の可能性を探った。一般的に「読み」は受動的な技能に分類されるが、テクスト受容者が自らの推測を検証しながら読み進める動的かつ能動的な活動でもある。ドイツのDaF/DaZ向けの言語学入門書でも扱われるテクスト言語学では、テクストはコミュニケーションのための出来事(ボウグランド・ドレスラー、1981)と定義される。本発表では、結束性に関わる指示、接続などに加え、引用やテクストの構造・展開にも注目し、テクスト全体を意識した分析的な読みを通してテクスト産出者の意図を読み取るまでの一連のプロセスを「読み」の活動ととらえ、論を展開する。