第13回日本独文学会関東支部研究発表会の開催と発表者募集のお知らせ(12月11日開催)

下記の日程で第13回日本独文学会関東支部研究発表会をオンラインにて開催いたします。

発表ご希望の方は、奮ってご応募くださいますようどうぞよろしくお願い申し上げます

まだ関東支部に加入していない研究者・院生の方々にもお知らせいただけると大変ありがたく存じます。

1.日時:2022年12月11日(日)13:00から(開始時間は変更の可能性あり)

2.方式:ビデオ会議システムZoomによる同時双方向型

3.発表内容・形式

・ドイツ文学・文化・語学・教育・社会に関する研究

・発表時間25分 + 質疑10分(日本独文学会の口頭発表に準じる)

・研究発表会の最後に懇談会を予定しています。

4.応募要領

以下の内容を記し、日本独文学会関東支部:eingang@jgg-kantou.org(@を小文字にしてください)まで、メールにてお申し込みください。

(1)氏名

(2)連絡先(メールアドレス、電話番号)

(3)所属

(4)研究発表表題

(5)発表内容要旨(600字程度) 下記の内容を踏まえて作成してください。

・研究の目的

・先行研究との関連

・主張したいテーゼ

5.発表後、発表要旨は日本独文学会関東支部ホームページ上に公開いたします。

6.締め切り:9月30日(金)

7.結果連絡:10月中旬ごろまでに結果および発表要領の詳細についてお知らせする予定です。

2022年6月20日

<日本独文学会関東支部> (支部長) 境 一三(支部選出理事)浅井 英樹

(庶務幹事)江口 大輔 山本 潤(会計幹事)桂 元嗣 (広報幹事)日名 淳裕

2022年度関東支部オンライン総会開催のお知らせ

日本独文学会関東支部会員各位

日頃より関東支部の活動にご協力を賜り、ありがとうございます。

関東支部では来る6月12日(日)にオンライン総会を行います。

日時:6月12日(日)11:00〜11:30

開催方法:Zoomによるリアルタイム配信

参加方法:会員向けのメーリングリストにてZoomのミーティングURLを通知いたします。

 

【プログラム】

1.報告事項:2021年度活動報告

・庶務、会計、広報

・その他

2.審議事項:2022年度活動方針

・2022年度予算案

・2022年度研究発表会

・2023年度幹事選挙

・その他

 

・ご不明な点はeingang@jgg-kantou.org までお寄せください。

以上よろしくお願いいたします。

日本独文学会関東支部 幹事一同

第12回日本独文学会関東支部研究発表会のご案内

下記の日程で第12回日本独文学会関東支部研究発表会を開催いたします。
皆様のご参加を心よりお待ちしております。

日時:2021年12月12日(日)13:00-16:10

開催方法:Zoomによるリアルタイム配信

参加方法:関東支部会員の方には会員向けのメーリングリストにて発表会前日までにZoomのミーティングURLを通知いたします。会員でない方は、下記リンクのフォームよりお申し込みください。

*ご不明な点はeingang@jgg-kantou.org までお寄せください

<日本独文学会関東支部>

(支部長) 境一三(支部選出理事)浅井英樹(庶務幹事)江口大輔 山本潤

(広報幹事)日名 淳裕(会計幹事)桂 元嗣

 

プログラム

12:55  Zoomミーティング開場

13:00  幹事・支部長挨拶

13:10〜13:45  伊藤港(学習院大学):Absentiv(不在構文)の用法について

13:50〜14:25  森下勇矢(東京大学):道化服と悪魔 ―『阿呆物語』にみる愚者から悪漢への変貌

14:25〜14:50    休憩

14:50〜15:25    相馬尚之(東京大学):心身一元論から「原-自我」へ ―1920年代におけるデーブリーンの自然哲学

15:30〜16:05    前田佳一(お茶の水女子大学):インゲボルク・バッハマンの短編集『三十歳』における固有名の機能

16:10  閉会

発表要旨

発表1(語学)伊藤港

Absentiv(不在構文)の用法について

本発表では、Absentiv(不在構文)が背景描写や様子を表現するフランス語の半過去形と似ている点を明らかにし、ドイツ語にはないとされている新たな時制である未完了相を形成している可能性を検証する。Absentiv (不在構文) とは、以下の例の通りである。

(例) Er war einkaufen. 彼は買い物に行っていた。

ドイツ語のAbsentiv (不在構文) とは、 (sein + 不定詞) の形で作られるものであり、de Groot (2000) で初めて説明がなされている。この構文は、主語の不在を意味するものあり、日本語で「○○をしに行っている/ いた」と訳すことができ、進行形的な表現だと考えられる。だが、日本にあるほとんどの文法書や教科書に記載されていないのである。また、先行研究ではVendler (1967) の動詞分類に従って、Absentivを構成する動詞の種類分けのみが行われており、コンテクスト、アスペクト、分離動詞、動詞の目的語の冠詞などについて十分に考察されていない。しかし、マンハイムのドイツ語研究 (Institut für Deutsche Sprache, Mannheim; IDS) のCOSMASⅡ (検索システム) でコーパスを検索し分析した結果、先行研究に挙げられていなかった Absentiv に使われる動詞や接続法2式の形もいくつか発見することができた。またコンテクストに注目すると、文中に現れるAbsentiv は「主語が話の中心地にいない」というVogel (2007) などで述べられていた元々の不在の意味だけではなく、補足的情報、背景部の記述をする機能も持ち合わせていると考えられる例文がいくつもあった。そのため、Absentiv がドイツ語の今までになかった時制である未完了を表現する構文である可能性があり、それがフランス語の半過去形の表現に類似している。フランス語の半過去形は、過去のある時点での行為、状態をまだ完了していない進行中のものとして表現し、継続、習慣、反復、描写などの多彩な用法を持っているものである。

 

発表2(文学)森下勇矢

道化服と悪魔

『阿呆物語』にみる愚者から悪漢への変貌

ドイツ近世の諷刺作品や謝肉祭劇で多く見られた道化の形象と結びつくのは、彼らを指す語「Narr」が示す通り、人間の「愚」の概念である。この「愚者概念Narrenidee」はセバスティアン・ブラント(Sebastian Brant, 1457-1521)の『阿呆船』(Das Narrenschiff, 1494)に代表される「愚者文学」の根幹をなすものであった。そして、ブラントに続くトーマス・ムルナー(Thomas Murner, 1475-1537)やデジデリウス・エラスムス(Desiderius Erasmus, 1466-1536)を始めとする多くの愚者文学作家に連なるのが、バロック期の諷刺作家ハンス・ヤーコプ・クリストッフェル・フォン・グリンメルスハウゼン(Hans Jakob Christoffel von Grimmelshausen, 1622-1676)である。本研究では、グリンメルスハウゼンの代表作『阿呆物語』(Der Abentheuerliche Simplicissimus Teutsch, 1668)を取り上げ、この作品が内包する愚者概念と主人公ジンプリチウスが持つ道化性を明らかにすることを試みる。

ジーン・シリンガーはジンプリチウスが持つ純真さの源である「単純さsimplicitas」と対をなす愚かさを「ストゥルティティアstultitia」とした上で、これら二つの愚がジンプリチウスの中で互いにぶつかりあうと述べる。(Schillinger, 2007) 否定的愚である「stultitia」は、すでに旧約聖書の中で「賢sapiens」と対置されて扱われた概念であるが、これは罪に陥る人間の根本要因となるものであり、ジンプリチウスを「徐々に悪徳へと導いていく」(Moll, 2015)。本研究ではシリンガーの論じる愚の対立構造をふまえつつ、「simplicitas」によって無垢な状態にあった少年ジンプリチウスが職業道化となったのち、「悪魔の模倣imitatio diaboli」を行いつつ「stultitia」にのまれていくプロセスに分析の焦点を置く。ジンプリチウスの悪漢への変容が、彼の道化性と愚の相互作用によって引き起こされるというテーゼを立て、中世以降の神学的議論に鑑みながらこの検証を行う。

 

発表3(文学)相馬尚之

心身一元論から「原-自我」へ

――1920年代におけるデーブリーンの自然哲学

本発表は、ドイツ人作家アルフレート・デーブリーン(Alfred Döblin 1878-1957)の1920年代の自然哲学について、当時の一元論思想との関係から論じる。デーブリーンは文学的評価が先行しているが、近年では彼の精神科医としての経歴や自然哲学、その小説との関係も注目されている。

本発表では、まずデーブリーンのエッセー「自然とその魂」(„Die Natur und ihre Seelen“ 1922)を取り上げ、その万物の魂(Allbeseeltheit)の構想について同時代の生物学者エルンスト・ヘッケル(Ernst Haeckel 1834-1919)の一元論的世界観との相似から論じる。だがこれは自然科学からの逸脱に留まらない。科学との調停を目指す一元論思想は19世紀後半に「心的素材理論(Mind-Stuff Theory)」を発展させており、微細な原子にも魂が宿るとする主張は、アメリカの心理学者ウィリアム・ジェイムズ(William James 1842-1910)が論じたように、進化論の時代における一元論の不可避的要請であった。

しかしデーブリーンは、『自然を超える自我』(Das Ich über der Natur, 1927)において自我の分類のみならず「原-自我(Ur-Ich)」の導入により、世界内の個体の再評価を試みる。精神物理学の影響を残すデーブリーンの折衷的自然哲学からは、心身一元論の葛藤――精神の物質的還元と物質自体の精神化――が明らかになるのだ。

 

発表4(文学)前田佳一

インゲボルク・バッハマンの短編集『三十歳』における固有名の機能

1960年に「名前との付き合い」と題した詩学講義を行ったことからわかるようにインゲボルク・バッハマンは文学作品における固有名というテーマに強い関心を有していた。発表者は前田(2019)においてDebus(2012)による文学的固有名の機能類型を応用してバッハマン作品における地名の機能を分析し、バッハマンが固有名の「アウラ」による錯覚形成機能を批判的に捉え、それを無効化・脱魔術化しようとしていたことを明らかにした。

本発表ではそれを引き継ぎ、短編集『三十歳』(1961)収録の諸作品における人物名の機能を考察する。上記詩学講義では文学史上の有名作品における人名が有していたアウラの「壊死」について言及されるが、それに呼応するかのように同短編集における登場人物の名称は多くの場合(「三十歳」のモル、エレーナ、レーニ、ヘレーナ、「すべて」のフィップス、「ウンディーネが行く」のハンス等)固有性を喪失した陳腐で類型的な名として登場する一方で、物語中重要な役割を果たす人物たち(「三十歳」の名前のない女と運転手、「人殺しと狂人たちのあいだで」における見知らぬ男等)には名前がつけられることはなく、匿名のまま作中で言及される。こうした人名の無意味化と匿名化は既にみた地名の脱魔術化と符合しているが、同作品集はそれにとどまらず、語り手の「私(Ich)」という名をも無効化する契機を含んでおり(「オーストリアの町での子ども時代」「三十歳」等)、あらゆる名称のアウラを無効化せんとするバッハマンの志向がここに見て取れることを本発表は最終的に指摘する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第12回日本独文学会関東支部研究発表会の開催と発表者募集のお知らせ(12月12日開催)

第12回日本独文学会関東支部研究発表会の開催と発表者募集のお知らせ(12月12日開催)

下記の日程で第12回日本独文学会関東支部研究発表会をオンラインにて開催いたします。

発表ご希望の方は、奮ってご応募くださいますようどうぞよろしくお願い申し上げます。

まだ関東支部に加入していない研究者・院生の方々にもお知らせいただけると大変ありがたく存じます。

1.日時:2021年12月12日(日)13:00から(開始時間は変更の可能性あり)

2.:方式:ビデオ会議システムZoomによる同時双方向型

3.発表内容・形式

・ドイツ文学・文化・語学・教育・社会に関する研究

・発表時間25分 + 質疑10分(日本独文学会の口頭発表に準じる)

4.応募要領

以下の内容を記し、日本独文学会関東支部:eingang@jgg-kantou.org(@を小文字にしてください)までメールにてお申し込みください。

(1)氏名

(2)連絡先(住所、メールアドレス、電話番号)

(3)所属

(4)研究発表表題

(5)発表内容要旨(600字程度) 下記の内容を踏まえて作成してください。

・研究の目的

・先行研究との関連

・主張したいテーゼ

5.発表後、発表要旨は日本独文学会関東支部ホームページ上に公開いたします。

6.締め切り:9月30日(木)

7.結果連絡:10月中旬ごろまでに結果および発表要領の詳細についてお知らせする予定です。

2021年8月1日

<日本独文学会関東支部> (支部長) 境 一三 (支部選出理事)浅井 英樹

(庶務幹事)江口 大輔 山本 潤(会計幹事)桂 元嗣 (広報幹事)日名 淳裕

第11回日本独文学会関東支部研究発表会のご案内

下記の日程で第11回日本独文学会関東支部研究発表会を開催いたします。
皆様のご参加を心よりお待ちしております。

日時:2020年12月13日(日)13:00-17:30

開催方法:Zoomによるリアルタイム配信

参加方法関東支部会員の方には会員向けのメーリングリストにて発表会前日までにZoomのミーティングURLを通知いたします。会員でない方は、下記リンクのフォームよりお申し込みください(会員の方はお申し込みをする必要はありません)。

 

【注意!】関東支部メーリングリストに登録されている会員であるにもかかわらず、関東支部からのお知らせが届いていないという事例があるようですもし前日までにZoomのミーティングURLが届いていないという方がいらっしゃいましたら、eingang@jgg-kantou.org までご連絡ください。至急URLをお教えいたします。

プログラムと発表要旨のダウンロード: 2020関東支部研究発表会pdf

プログラム

12:55 Zoomミーティング開場
13:00 幹事・支部長挨拶
13:10〜13:45 小野二葉
声の遠近―川上弘美『真鶴』の日独話法比較
13:50〜14:25 清水恒志
小説はどこまで美を表現しうるか-E. T. A. ホフマン『騎士グルック』と『カロ風幻想絵画集』
14:30〜15:05 相馬尚之
戦間期ドイツにおける進化論の射程―リ・トッコ『オートマタ時代』(1930)における一元論的世界観の表出
15:05〜15:30 休憩
15:30〜16:05 日名淳裕
イルゼ・アイヒンガー『贈られた助言』における「錆」の主題
16:10〜16:45 別府陽子
共苦の人・ゲルダ・ブッデンブローク―『ビルゼと私』をもとにして
16:50〜17:25 山﨑裕太
ニクラス・ルーマンの索引カード箱とコンピューター  
17:30 閉会
*ご不明な点はeingang@jgg-kantou.org までお寄せください。

 

<日本独文学会関東支部> (支部長) 山本 潤

(支部選出理事・庶務幹事)前田 佳一(広報幹事)日名 淳裕

(会計幹事)桂 元嗣

発表要旨

発表1(文学)小野二葉

声の遠近――川上弘美『真鶴』の日独話法比較

文学作品の話法の翻訳に関する研究は、現在までのところ純粋に技法的な領域に限定されており、作品の語りの問題と有機的に関連づけられているとはいいがたい。翻訳においてはしばしば話法の変更が行われるが、このことはしかし、翻訳の巧拙という視点のみならず、語りの「声」の変更という視点からも考察されるべきである。

本研究では、異なる言語間の比較を可能にするために、話法を「語り」と「語られる物語世界」の間の距離を表すものとして捉え、川上弘美『真鶴』の日本語原典とドイツ語翻訳における語りの声を比較する。『真鶴』の物語世界は、一人称の語り手「わたし(ich)」によって語られるが、「わたし」の「声」はそれ自体で独立した語りの地位を占めているのではなく、他の登場人物の「声」と近づいたり遠ざかったりする、その関係を通じて立ちあがってくる。話法の区別が流動的な日本語テクストでは、したがって声の遠近も流動的になり、一方、話法の区別が比較的明確なドイツ語テクストでは、話法の訳し分けによって距離の変化のダイナミズムが生じることを、本研究は明らかにする。このことはしかし、異言語間における語りの(正確な)翻訳の不可能性を示唆するというよりむしろ、テクスト間の声がお互いに関連し、影響し合う異文化間対話、すなわち翻訳は、声の多重性という点で小説言語そのものと本質を同じくしていることを示唆しているのだろう。

発表2(文学)清水恒志

小説はどこまで美を表現しうるか

――E. T. A. ホフマン『騎士グルック』と『カロ風幻想絵画集』

『騎士グルック』は後期ロマン派の作家ホフマンが1809年に公表した小説であり、後の1814年に『カロ風幻想絵画集』第一巻に収録された。

狂気の音楽家と語り手との出会いを描くこの短編小説は、音楽や絵画などの芸術への関心や、大都市のレアリテートと幻想、あるいは狂気と精神医学というように多様な要素を含み、豊饒な読解の可能性を示している。しかし本作は『カロ風幻想絵画集』の他作品との文脈の中で論じられて初めてその全貌が明らかになろう。それは『騎士グルック』が『カロ風幻想絵画集』に組み込まれ他の作品との相互的な反省関係に置かれることで、小説による美の表現可能性の追求という作品に内在する試みがあらためて浮き彫りになっていると考えられるためである。

『カロ風幻想絵画集』に収録された他作品との関連という視点では、すでにLubkoll(1995)が音楽小説の観点から『クライスレリアーナ』と、またNeumann(1995)が知覚論やメディア論の観点から『ドン・ジョバンニ』やジャン・パウルによる序文などと合わせて本作を論じている。本発表ではこれらの先行研究を踏まえた上で、『騎士グルック』が音楽と絵画、そして文学を合わせ、さらには五感をも叙述することを目指しながら、同時に『カロ風幻想絵画集』一巻全体において「空白の楽譜」という想像力の表現の限界を示すモティーフを繰り返すことで、自己批評性をも持つ総体的な小説の試みであることを示したい。

発表3(文学)相馬尚之

戦間期ドイツにおける進化論の射程

――リ・トッコ『オートマタ時代』(1930)における一元論的世界観の表出

本発表は、作家・化学技術者リ・トッコ(Ri Tokko, ルートヴィッヒ・デクスハイマー Ludwig Dexheimer 1891-1966)の未来小説『オートマタ時代――ある予測的小説』(Das Automatenzetialter: ein prognostischer Roman, 1930)における機械表象から、生物学者エルンスト・ヘッケルの一元論的世界観の広がりを踏まえつつ、当時の生物学の普遍化の試みについて検討する。

 戦間期ドイツでは多くの未来/技術/ユートピア小説が著されたが、デクスハイマーの小説は一貫した筋も産業社会への諷刺もなく、延々と楽観的未来予測と技術史の講釈が続くため、冗長で低級な作品とされた。

 本発表では第一に、『オートマタ時代』における機械の発展史が、進化論の概念と用語に依拠していることを確認し、続けて、作中の人造人間「ホマート」の機構に対する生理学者リヒャルト・ゼーモンの有機記憶論の影響を示す。デクスハイマーは、進化論の濫用に対する文芸的諷刺ではなく、将来の「科学的」予測のために機械に生物学を援用しており、機械と生物ひいては無機物と有機物の境界を越えるヘッケル的な「一元論的世界観」に傾倒している。

 デクスハイマーは化学者ヴィルヘルム・オストヴァルトと社会学者ルドルフ・ゴールトシャイトからの影響を認めているが、彼らは「ドイツ一元論者同盟」の枢要な会員であり、「一元論的世界観」は厳密科学の領域を超え当時の人々を魅了していた。『オートマタ時代』は文学的には駄作であるとしても、客観性を謳う生物学と文学的想像力の奇妙な遭遇例として、普遍的法則を追求する科学的世界観の傲慢と可能性を示している。

発表4(文学)日名 淳裕 

イルゼ・アイヒンガー『贈られた助言』における「錆」の主題

その散文作品が広く知られているイルゼ・アイヒンガー(Ilse Aichinger 1921-2016)は,自らの詩作品にたいする深い関心について述べてきた。主として1950年代に様々な雑誌に発表された散文詩は2001年にSimone Fässlerによって『クルツシュルッセ. ウィーン(Kurzschlüsse. Wien)』として一冊にまとめられた。一方1950年代後半以降に長い時間をかけて発表された詩をまとめたものが唯一の詩集とされる『贈られた助言(Verschenkter Rat)』(1978)である。 

アイヒンガーの詩作品は散文作品に比べると研究対象として論じられることが少ないままである。概観すると,散文詩に表現されたウィーンの地誌を読み解くもの,夫ギュンター・アイヒとの関連から創作過程を分析するもの,戦時下の体験とその記憶を詩から読み解くもの,アイヒンガーが好む言葉を手がかりに詩を分析するもの,詩作品を生起させている言語の構造に着目しアイヒンガーの詩全体をテクスト生成的に論じたものがある。本発表は『贈られた助言』に収録された複数の詩の中で用いられている「錆びるrosten」という動詞に注目する。この語が詩作品の結束構造をどのように担っているのかを音韻,形象の両面から考察する。

発表5(文学)別府陽子

共苦の人・ゲルダ・ブッデンブローク

――『ビルゼと私』をもとにして

トーマス・マン作『ブッデンブローク家の人々』の3代目トーマスの妻ゲルダは、美しく、ヴァイオリンを弾く芸術家気質の女性である。先行研究では、ゲルダは音楽で一族を没落に導く役割をもつといわれ、目元の翳や冷たいという叙述から、ゲルダは愛する能力がなく、自己の意志と幸福を優先すると論じられている。しかしこの見方からは、第10部で世間の人々がトーマスとゲルダの夫婦を、礼儀正しく互いを思いやり、かばい合う関係にあると感じることを説明できない。

マンはエッセイ『ビルゼと私』で、認識する芸術家に人間としての一面があることを記している。ゲルダは、芸術家としては、夫や義弟を観察して市民でないというが、人間としては、息子を思いやり、才能を理解する母であり、家業に必要な社交を為し、夫をいたわり、共に読書をする妻である。夫との「音楽的価値」をめぐる唯一の口論でも、ゲルダは夫の芸術的感性を認めたうえで、音楽的感性のみ劣るという。

またゲルダは、トーニの「私を嫌っていたわよね」に言い返さず、姪の婿の「ヴァイオリンのご機嫌」を伺う陳腐な挨拶に何も言わず、常に他者を非難しない。

夫が路上に倒れたとき、ゲルダが身を震わせてトーニにいう言葉、「……ひどいわ、侮辱だわ…」は、夫の努力と苦しみを認識して我が事として共に苦しむゲルダの思いやりと同情(共苦)の言葉である。

発表6(文学)山﨑裕太

ニクラス・ルーマンの索引カード箱とコンピューター

本発表は、索引カード箱(Zettelkasten)がコンピューターの前身であるという仮説を立て、これをニクラス・ルーマンの思想から検証することを目的とする。

私の主張するテーゼは、ルーマンのシステム論と索引カード箱に、バイナリーコードやファイル管理機能といったコンピューターシステム的な考え方が認められるということである。索引カード箱とコンピューターのファイル管理機能との類似はすでにGfrereisとStrittmatterらによって示唆されている。ルーマンはおよそ9万枚もの索引カードを所有し、それらは現在ビーレフェルト大学Niklas Luhmann-Archivにおいてデジタル化が進められている。その一部はインターネット上で閲覧可能である。同プロジェクトにおいて索引カード箱の詳細と、索引カード箱に対するルーマンの考えが包括的にまとめられている。しかしながら、ルーマンのシステム論に含まれる、オートポイエーシスといったコンピューターに関連する考えについては言及されていない。これを、ヴィレム・フルッサーやフリードリヒ・キットラーなどのコンピューター論と比較して論じたい。

 

 

 

第11回日本独文学会関東支部研究発表会の開催と発表者募集のお知らせ(12月13日開催)

第11回日本独文学会関東支部研究発表会の開催と発表者募集のお知らせ(12月13日開催)

下記の日程で第11回日本独文学会関東支部研究発表会をオンラインにて開催いたします。

発表ご希望の方は、奮ってご応募くださいますようどうぞよろしくお願い申し上げます。

まだ関東支部に加入していない研究者・院生の方々にもお知らせいただけると大変ありがたく存じます。

1.日時:2020年12月 13日(日)13:00から(開始時間は変更の可能性あり)

2.:方式:ビデオ会議システムZoomによる同時双方向型

3.発表内容・形式

・ドイツ文学・文化・語学・教育・社会に関する研究

・発表時間25分 + 質疑10分(日本独文学会の口頭発表に準じる)

4.応募要領

以下の内容を記し、日本独文学会関東支部:eingang@jgg-kantou.org(@を小文字にしてください)までメールにてお申し込みください。

(1)氏名

(2)連絡先(住所、メールアドレス、電話番号)

(3)所属

(4)研究発表表題

(5)発表内容要旨(600字程度) 下記の内容を踏まえて作成してください。

・研究の目的

・先行研究との関連

・主張したいテーゼ

5.発表後、発表要旨は日本独文学会関東支部ホームページ上に公開いたします。

6.締め切り:9月30日(水)

7.結果連絡:10月中旬ごろまでに結果および発表要領の詳細についてお知らせする予定です。

2020年7月10日

<日本独文学会関東支部> (支部長) 山本 潤

(支部選出理事・庶務幹事)前田 佳一(広報幹事)日名 淳裕

(会計幹事)桂 元嗣

(お願い)メールマガジン[Mitglieder / Nachricht]の未着について

日本独文学会関東支部では、メールマガジンの登録をされた方には”Nachricht”を、会員登録をされた方には”Nachricht”に加えて会員用のメーリングリストで”Mitglieder”を配信しています。

ご自身や周囲でメールが届かない等の不具合がございましたら、お手数ですがこちらまで連絡いただければ幸いです。

第10回日本独文学会関東支部研究発表会のご案内

 

下記の日程で第10回日本独文学会関東支部研究発表会を開催いたします。
皆様のご参加を心よりお待ちしております。

日時:2019年11月24日(日)14:00-16:50(13:30開場)

場所:成城大学3号館1階312教室

参加費:関東支部会員は無料、非会員は500円

プログラムと発表要旨のダウンロード: 2019関東支部研究発表会.pdf

 

プログラム

14:00〜14:05 開会の挨拶:支部長:今村武

14:05〜14:40 中村大介
対峙するふたりの自然研究者―E.T.A. ホフマン『ハイマトカレ』について―

14:45〜15:20 菅谷優
19世紀パリの言説 『パサージュ』読解にむけて

15:20~15:35 休憩

15:35〜16:10 積田活樹
飛んでいるのか、漂っているのか―インゲボルク・バッハマンの飛行機の表象

16:15〜16:50 林敬太
無形文化遺産条約に対するドイツ語圏の動向

16:50 閉会の挨拶

17:00〜 懇親会   ※懇親会の開始時間が変更になりました。

開場中、上記のプログラムに加えて、書店・出版社等による書籍展示が行われます。

 

(ご連絡)

1.会場予約の関係上、すでに懇親会へのご出席をお決めの方は、eingang@jgg-kantou.orgまでメールをいただければ幸甚です。

2.当日、新規入会申し込みおよび会費(年会費500円)の納入ができます。

 

<日本独文学会関東支部>
(支部長)今村武 (支部選出理事)前田佳一
(会計幹事)山本潤 (広報幹事)桂元嗣 (庶務幹事)日名淳裕

 

会場のご案内
成城大学3号館1階312教室(3号館は正門から入って左の建物)

交通アクセス
小田急線成城学園前駅から徒歩4分 

住所
〒157-8511 東京都世田谷区 成城6-1-20

成城大学交通案内URL
http://www.seijo.ac.jp/access/

※小田急線の快速急行は成城学園前駅に停車いたしません。急行をご利用ください。

 

 

発表要旨

 

発表1(文学)中村大介

対峙するふたりの自然研究者-E.T.A. ホフマン『ハイマトカレ』についてー

 E.T.A. ホフマンは、ハワイを舞台とした『ハイマトカレ』という書簡体の物語を残した。親友同士であったメンジースとブロートンという自然研究者ふたりがオアフ島で虱を巡って決闘に及び、両者の死で幕を閉じる。

これまでの研究においてはこの作品は学問もしくは研究者への批判・諷刺として読まれてきた。この作品については近年ポストコロニアリズムの文脈から解釈する研究も出ているが、それでもこの作品の学問・研究者への批判・諷刺という側面は見逃されてはならない。メンジースは昆虫の研究者、ブロートンは植物・動物の研究者と、ふたりの研究分野の違いがあるにも関わらず、両者の描き分けについては先行研究で十分に論じられているとはいえない。文学や芸術における学者諷刺を論じたコジェニーナによれば昆虫を研究する者は諷刺の格好の対象となっており、そうした作品を書いたものとして、ドイツ語圏ではボードマー/ブライティンガーの例があげられる。『ハイマトカレ』の昆虫学者に対する戯画的な描写は明らかにこうした流れを汲んでいる。

オアフ島探検隊への参加を許されながら孤独を抱える昆虫学者メンジースと、隊の正式メンバーとして自分の役割を果たそうとするブロートンとのあいだには差異が見られ、研究者として一括りにして論じてしまうのは適切ではない。本発表では、『ハイマトカレ』はそれまでにあった昆虫学者諷刺の流れを汲み、さらに18世紀ごろからの博物学の流行を背景としながら、孤独な研究者と組織の一員として活動する研究者との対峙の様相を描いた物語であることを示す。

 

発表2(文学)菅谷優

19世紀パリの言説 『パサージュ』読解にむけて

W・ベンヤミン『パサージュ』の読解を目指しての博士論文の執筆、過程は大きく三つに分けられる。:1.都市の交通を避けて遊歩が可能な具体的空間としてのパサージュが意義を持つに至る19世紀中庸までのパリの状況描出 2.パサージュおよび郊外に至る場末通りを後にし、雑踏と交通が満ちる市街地・街路における遊歩の術を身に着けた「現代的遊歩者」の記述(モデル:ボードレール)3.遊歩の技術を内化することで成立した都市生活の主体、そして技術的に招来される「集合」によるこの遊歩者的主体性の断続的な中断と発散の可能性の記述、サイレント期の映画受容をモデルとして。なかでも今回は第一第二過程に焦点を絞って概要を述べたい。『複製芸術論』において提出される拡散的注意力(「確信を剥ぐ…」)、このメカニズムを『パサージュ』の読解において作動させる可能性の呈示を博士論文は目指すことになるが、今回はその前提状況として、集中の原理が伝統的経験の儀式性とはともに死なず、いかに希薄化しつつ都市交通・生活における主体性(「商品への感情移入…」)を構成するに至ったか、を浮き彫りにする。

 

発表3(文学)積田活樹

飛んでいるのか、漂っているのかーインゲボルク・バッハマンの飛行機の表象

 本発表はインゲボルク・バッハマンの飛行機の表象について論じる。しばしば彼女の作品には飛行機のモチーフが様々なかたちで登場する。しかし先行研究で飛行機表象が注目されたことはほとんどなかった。飛行機の発明と普及によって、人間の知覚と社会は大きく変化した。文学が飛行機をどう描いてきたかという主題は研究に値する。 そこで彼女の初期詩作品(1944-1953)とエッセイ『密航者たち』(1955)に登場する飛行機モチーフの分析を試みる。

彼女の最初期の詩には飛行機こそ登場しないものの、飛行のモチーフが頻出する。ハンス・ヘラーの研究(1987)によれば、初期詩作品は作者自身の戦争経験と密に結びついており、それは飛行モチーフが登場する作品にも当てはまる。飛行機を主題とした詩「夜間飛行」(1953)も例外ではなく、戦争のトラウマ的記憶と結びつけて解釈できる。

『密航者たち』は作者自身の飛行機体験を主題化したエッセイである。「夜間飛行」と同様、この作品でも飛行機の表象は暴力と結びついている。そうした飛行機に対する批判的観点は、マルティン・ハイデガーがブレーメン講演(1949)で展開した飛行機批判と部分的に通底する。 一見、このエッセイは一貫して飛行機を批判しているように思える。しかし作中の乗客の視覚の描写に着目すれば、バッハマンの中心的トポスである「越境」が飛行機によって実現していると解釈できるだろう。彼女の飛行機表象は単なる近代技術批判ではなく、その克服も示唆しているのではないか。

 

発表4(文化)林敬太

無形文化遺産条約に対するドイツ語圏の動向

 本発表は前年度に行われた発表である「無形文化遺産と謝肉祭」に続くもので,ユネスコが制定した無形文化遺産条約に対するドイツ語圏の活動を通じて,ユネスコで行われている「文化」概念に対する議論を分析する。

ユネスコではヨーロッパ圏の価値観に則った世界遺産条約の制定と並行して,非ヨーロッパ圏の文化を保護するための議論が行われ,21世紀に入ってから無形文化遺産条約として結実した。その議論は実に30年以上に及び,「無形文化」という存在がどのようなものかという定義付けがユネスコによって行われた。条約制定までの経緯や条約が持つ理念については,これまでに国連職員やジャーナリストなどによって概要が報告され,前年度の発表でも取り上げられた。しかしながら,加盟国の提案によって条約の内容が変化する,という無形文化遺産条約の性質上,条約の内容は常に更新される可能性があるため,条約に対する研究は継続され続けるべきだと言える。

無形文化遺産への登録に向けた加盟国の活動は,ただ加盟国の側が一方的にユネスコの設定した査定基準に従うものではなく,加盟国が登録を望む候補を立てることを通じて条約に働きかけることができる相互的なものであり,条約締結国全てが注目すべきものである。例えば,ドイツは謝肉祭といった祝祭や他の様々な文化的活動の主体となる「協同組合」を自国では初めての無形文化遺産として登録し,それは日本の民俗学者などに驚きをもって迎えられた。このような市民団体の活動がドイツ語圏の無形文化にとって大きな役割を果たしていることが,ユネスコによって可視化されたと言える。ドイツ語圏の文化を知るために,その背景となる市民の活動を知ることが今後はより重要であると言えるだろう。

第10回日本独文学会関東支部研究発表会の開催と発表者募集のお知らせ(11月24日開催)

 
下記の日程で第10回日本独文学会関東支部研究発表会を開催いたします。
発表ご希望の方は、奮ってご応募くださいますようどうぞよろしくお願い申し上げます。
まだ関東支部に加入していない研究者・院生の方々にもお知らせいただけると大変ありがたく存じます。
1.日時:201911 24日(日)13:00から(開始時間は変更の可能性あり)
 
2.会場:成城大学3号館1312教室(3号館は正門から入って左の建物)
交通アクセス:小田急線成城学園前駅から徒歩4分(下記URLを参照)
http://www.seijo.ac.jp/access/
1:小田急線の快速急行は成城学園前駅に停車いたしません。急行をご利用ください。
 
3.発表内容・形式
・ドイツ文学・文化・語学・教育・社会に関する研究
・発表時間25分 + 質疑10分(日本独文学会の口頭発表に準じる)
  
4.応募要領
以下の内容を記し、日本独文学会関東支部:eingangjgg-kantou.org(@を小文字にしてください)までメールにてお申し込みください。
(1)氏名
(2)連絡先(住所、メールアドレス、電話番号)
(3)所属
(4)研究発表表題
(5)発表内容要旨(600字程度) 下記の内容を踏まえて作成してください。
・研究の目的
・先行研究との関連
・主張したいテーゼ
  
5.発表後、発表要旨は日本独文学会関東支部ホームページ上に公開いたします。 
6.締め切り:915日(日) 
 
7.結果連絡:9月下旬ごろに結果および発表要領の詳細についてお知らせする予定です。
  
2019年8月1日
支部長    今村 武
支部選出理事 前田 佳一
会計幹事   山本 潤
庶務幹事   日名 淳裕
広報幹事   桂 元嗣

2018年第9回日本独文学会関東支部研究発表会

2018年11月 24日(土)にお茶の水女子大学において第9回日本独文学会関東支部研究発表会が開催されました.
当日は7名の方に報告していただき、その後活発な議論が交わされました.
終了後は,懇親会で遅くまで議論や情報交換が続きました.

プログラム

12:30〜12:35 開会の挨拶:支部長:境 一三

<第一部 文学> 司会:須藤 勲 松鵜 功記

12:35〜13:15 五十嵐 遥也
認識主体と万物流転の世界-マッハの認識論によるムージル『愛の完成』読解の試み

13:15〜13:55 石橋 奈智
「白昼夢」の克服-ホーフマンスタール『帰国者の手紙』における複数の空間について

13:55〜14:35 栗田 くり菜
ステレオタイプを笑う-ヤーデ・カラの『セラーム・ベルリン』より

14:35〜15:15 森下 勇矢
グリンメルスハウゼンの愚者概念-ジンプリチシムス作品群の宗教要素と愚の連関

15:15〜15:30 休憩

<第二部 言語学・文化・社会> 司会:浅井 英樹 渡邊 徳明

15:30〜16:10 白井 智美
日独空間表現の分析における「話者の(非)客体化」視点の説明能力について

16:10〜16:50 林 敬太
ユネスコ無形文化遺産と謝肉祭

16:50〜17:30 山本 菜月
親になりたい者は誰か:出生意欲と家族像の関連

17:30〜17:40 幹事会からの報告

17:40 閉会の挨拶