発表者
菅谷優
日時:
2019年11月24日
場所:
成城大学

発表要旨:
W・ベンヤミン『パサージュ』の読解を目指しての博士論文の執筆、過程は大きく三つに分けられる。:1.都市の交通を避けて遊歩が可能な具体的空間としてのパサージュが意義を持つに至る19世紀中庸までのパリの状況描出 2.パサージュおよび郊外に至る場末通りを後にし、雑踏と交通が満ちる市街地・街路における遊歩の術を身に着けた「現代的遊歩者」の記述(モデル:ボードレール)3.遊歩の技術を内化することで成立した都市生活の主体、そして技術的に招来される「集合」によるこの遊歩者的主体性の断続的な中断と発散の可能性の記述、サイレント期の映画受容をモデルとして。なかでも今回は第一第二過程に焦点を絞って概要を述べたい。『複製芸術論』において提出される拡散的注意力(「確信を剥ぐ…」)、このメカニズムを『パサージュ』の読解において作動させる可能性の呈示を博士論文は目指すことになるが、今回はその前提状況として、集中の原理が伝統的経験の儀式性とはともに死なず、いかに希薄化しつつ都市交通・生活における主体性(「商品への感情移入…」)を構成するに至ったか、を浮き彫りにする。